ナーブルス石鹸の表面に刻まれた、小さな模様や文字。何気なく見過ごしてしまいそうですが、その印にも石鹸づくりの歴史が表れています。パレスチナで受け継がれてきた石鹸の刻印には、どのような役割があるのでしょうか。
石鹸に刻まれる、家族や工房の印
ナーブルス石鹸は、オリーブオイルを主原料とする伝統的な手工芸品です。ユネスコが紹介する製造の伝統では、オリーブの収穫後に石鹸を作り、家族の印を押して包装する工程が記されています。刻印は、石鹸の作り手とその伝統を伝える大切な要素の一つです。
一方、ナーブルスの石鹸産業では、工場ごとの商標や包装紙にも独自の印が使われてきました。同じ四角い石鹸でも、刻まれた印や包み紙を眺めると、それぞれの作り手が大切にしてきた名前や歴史に目を向けることができます。
かつて使われていた印には、どんなものがあった?
パレスチナ研究の資料には、歴史的なナーブルス石鹸のブランドに、二つの鍵、ラクダ、ダチョウ、星、満月、ライオンなどの名前や図柄があったことが紹介されています。印を見分けることは、買い手にとって製造元を知る手がかりにもなりました。
ただし、これらは歴史的な事例です。現在販売されているすべてのナーブルス石鹸に、同じ図柄が刻まれているわけではありません。
刻印は、製造工程のどこで付けられる?
伝統的な工房では、釜で作った石鹸の生地を広い場所に流し、固まり始めたところで切り分けます。その工程の前後に工房の印を押し、一つひとつの石鹸として仕上げていきます。製造方法や刻印の位置には、工房ごとの違いがあります。
石鹸の作り方については、関連記事「ナーブルスソープの作り方|伝統的な製造工程」でも紹介しています。
刻印から、石鹸の背景に思いを巡らせる
刻印は作り手を知る手がかりですが、それだけで原料、認証、製造時期まで判断できるわけではありません。商品を選ぶ際には、包装に記載された成分や製造販売元の情報も確かめたいところです。
2024年には「パレスチナにおけるナーブルス石鹸製造の伝統」がユネスコの無形文化遺産代表一覧表に登録されました。石鹸に残された小さな印から、オリーブの収穫、家族や工房の仕事、そして受け継がれてきた暮らしへと、関心を広げてみませんか。
参考資料
乾燥肌・敏感肌の方にも選ばれているオリーブ石鹸。
10世紀から続く伝統製法で作られた完全無添加石鹸。パレスチナの伝統産業として、今も大切に受け継がれています。










