エド・シーラン、ガザを「正当化できない」と発言
マックルモア降板で揺れる米ツアー
世界的な人気を誇る英国のシンガーソングライター、エド・シーラン(Ed Sheeran)のアメリカツアーが、パレスチナをめぐる大きな議論の渦中にあります。
きっかけとなったのは、ツアーのオープニングアクトとして出演していた米国のラッパー、マックルモア(Macklemore)がステージ上で「Free Palestine(パレスチナに自由を)」と発言したことでした。
その後、マックルモアは残りのツアー公演から外され、ほかの出演アーティストも相次いで離脱。沈黙を批判されていたエド・シーラン自身も、9月19日のフィラデルフィア公演でガザについて語りました。
マックルモアがステージで「Free Palestine」
Reutersによると、2026年9月4日、ニュージャージー州メットライフ・スタジアムで行われたエド・シーランの公演で、マックルモアは自身の楽曲「Hind’s Hall」を紹介する際、「Free Palestine」と発言しました。
マックルモアは以前からパレスチナ問題について発言を続けており、2024年に発表した「Hind’s Hall」も、パレスチナへの連帯を表明した楽曲として知られています。
今回のステージでも、ガザや占領下のヨルダン川西岸にいる人々に「忘れていないということを伝えたい」という趣旨の発言をしました。
会場側がマックルモアの出演に反対
公演後、Israeli-American Council(イスラエル系米国人団体)は、エド・シーランに対してマックルモアをツアーから外すよう求める運動を開始しました。
その後、ツアーを運営するMessina Touring Groupは、今後の公演会場のオーナー側から「マックルモアが出演する場合、公演を開催させない」とする意向が伝えられたと説明しています。
マックルモア自身は、ニューイングランド・ペイトリオッツのオーナーで、Gillette Stadiumを所有するロバート・クラフト氏が複数のスタジアム所有者に働きかけたと主張しました。
一方、クラフト氏側は、マックルモアの過去の発言やステージ上の表現について、ユダヤ人コミュニティーに対して傷つける内容があったとの立場を示しています。マックルモアは反ユダヤ主義との批判を否定し、イスラエル政府への批判とユダヤ人に対する差別は区別すべきだとしています。
マックルモア、エド・シーランのツアーから降板
9月14日、マックルモアはエド・シーランの米国ツアーの残りの出演予定から外れることになりました。
エド・シーランはその後、この判断について「自分が決めたものではない」と説明。ツアープロモーターや会場側、双方の立場の関係者と話し合いを行ったものの、最終的には会場とプロモーター側の判断だったとしています。
ただしAP通信は、巨大なスタジアムツアーでは会場やプロモーターが大きな権限を持つ一方、エド・シーランほどの規模のアーティストにも公演内容について大きな影響力があるとする音楽業界関係者の見方を伝えています。
ほかのアーティストも相次いでツアーを離脱
騒動はマックルモアだけでは終わりませんでした。
Beoga、Aaron Rowe、Lukas Graham、Finneasなど、エド・シーランのツアーに参加予定だったアーティストが、マックルモアへの連帯を表明して相次いで出演を取りやめました。
Finneasは、抑圧されている人々について声を上げるアーティストが沈黙させられるべきではないという趣旨の声明を発表しています。
こうして一人のアーティストの「Free Palestine」という発言をめぐる問題は、音楽業界における表現の自由や、巨大スタジアムを所有する企業とアーティストの関係にまで議論を広げることになりました。
エド・シーランがついにガザについて発言
そして9月19日、フィラデルフィアのLincoln Financial Fieldで行われた公演で、エド・シーラン本人が観客の前でガザについて語りました。
エドは、2023年10月7日にイスラエルで起きたハマスによる攻撃を「恐ろしいものだった」としたうえで、その後ガザで起きていることについて「壊滅的で、正当化できず、不均衡だ」と述べました。
民間人、そして子どもたちの命が失われていることについて心を痛めているとも語り、ヨルダン川西岸についても「構造的な不正義」が存在すると言及しました。
エドは今回の騒動への自身の対応についても、難しい判断を迫られる中で間違いを犯したとして観客に謝罪しています。
「表現内容を会場側が事前に確認すること」にも懸念
エドがもう一つ強く言及したのが、コンサート会場によるアーティストの表現内容への介入でした。
ReutersとAPによると、エドは、会場側が出演者の発言やパフォーマンス内容を事前に確認することに「深く懸念している」と述べ、自由な社会ではそのようなことが起きるべきではないという考えを示しました。
今回の問題は、「Free Palestine」という言葉そのものだけではありません。
アーティストは社会問題についてどこまで発言できるのか。巨大な会場やプロモーターには、どこまで出演者の表現を制限する権限があるのか。そして、パレスチナについて声を上げることと反ユダヤ主義をどのように区別して考えるのか。
世界最大級の音楽ツアーを舞台に、これらの問題が改めて問われることになりました。
マックルモアは100万ドルをパレスチナ支援へ
ツアーを離れることになったマックルモアは、その後、エド・シーランのツアー出演で得た収益100万ドルをパレスチナ支援に寄付すると発表しました。
AP通信によると、支援先にはMedical Aid for Palestinians、Palestine Children’s Relief Fund(PCRF)、UNRWAなどが含まれています。
マックルモアは、今回の議論の焦点を自分自身やエド・シーランではなく、現在も困難な状況に置かれているパレスチナの人々に戻したいという考えを示しています。
音楽のステージから始まった今回の出来事は、パレスチナをめぐる発言、表現の自由、企業や会場の権限、そしてアーティストが社会問題にどう向き合うのかという、より大きな議論へと広がっています。
「パレスチナ最後の石鹸工場を未来へつなぐ」
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