パレスチナのガザ地区およびヨルダン川西岸地区では、2024年から2025年にかけてのオリーブ収穫期に、深刻な被害と制限が確認されています。
ガザ地区:収穫2か月遅れ、搾油所の多くが壊滅
2025年1月の停戦後、ガザ地区の農家たちは遅れて収穫を再開しましたが、空爆により搾油所の多くが破壊され、通常の収穫作業は困難を極めました。
パレスチナ農業省の発表によれば、栽培地の約74%が破壊され、約229万本のオリーブの木が失われたと報告されています。乾燥した気候によりオリーブの水分量が低下したことで、得られたオイルは香り高く良質なものとなりました。一方で、精密な成分分析を行うための検査施設も被害を受けたため、今回は熟練の官能評価士(テイスター)によって品質を確認する形が取られました。
西岸地区:収穫期中の暴力と土地へのアクセス制限
西岸地区では、オリーブの収穫期間中に入植者による暴力が急増。国連人道問題調整事務所(OCHA)は、2024年10〜11月だけで260件の暴力事件を確認し、57人が入植者に、11人が軍により負傷したと報告しました。
3,100本以上のオリーブの木が焼かれる・伐採されるなどの被害が発生しています。
また、農地への立ち入り制限も深刻で、パレスチナ農業省によると、2024年には35,000ドゥナム(約3,500ヘクタール)の土地が封鎖され、推定1,365トン(約8.5億円相当)のオリーブオイルの収穫が失われました。
環境破壊と土地政策の影響
現地では、入植地からのごみ・汚水の投棄、意図的な環境破壊行為も報告されています。また、耕作が10年以上行われていない土地を「国家所有地」とみなすオスマン時代の法律の再解釈により、農家が土地を失うケースも増えています。
こうした中でも、現地ではフェアトレード団体やNGOによる支援が継続されています。苗木の植樹、農業指導、収穫支援などを通じて、農業と土地の維持に取り組むプロジェクトが各地で展開されています。
「Million Tree Campaign」では、2024年に約10万本の果樹やオリーブ苗木が植えられ、9,000人以上の農業従事者が支援を受けたと報告されています。