2026年10月、ヨルダン川西岸地区のオリーブ収穫現場で、農家が自分の土地へ戻りたいと語りました。ロイター通信が記録した実際の証言から、畑で起きた出来事と収穫の意味をたどります。
10月9日、収穫の畑で聞かれた声
ヨルダン川西岸地区のデイル・イブジ(Deir Ibzi)で2026年10月9日、オリーブを収穫する人々とイスラエル人入植者の間で対立が起きました。ロイター通信が現地で撮影した映像には、畑で実を摘む人、収穫物を運ぶ人、現場にいたイスラエル軍兵士や入植者の姿が記録されています。
映像の中で土地所有者のハーゼム・マンスール(Hazem Mansour)さんは、自分の土地に近づいてオリーブを摘み始めたところ、入植者3人から押し戻され、催涙スプレーを使うと脅されたと説明しました。これは本人の証言であり、映像から個々の行為のすべてを独立して確認できるわけではありません。取材で語られた言葉の中心にあったのは、収穫を続けたいという願いでした。
「自分の土地を離れない」という意思
ロイターの取材でマンスールさんは、畑を離れるつもりはなく、自分のオリーブを収穫したいと述べました。さらに、立ち退くように迫られたとしても戻ってくる意思を示しています。ここで大切なのは、言葉を勇ましい標語に置き換えることではなく、本人が何をしようとしていたのかを丁寧に伝えることです。
収穫のために畑へ入る。木のそばに立ち、枝を見上げ、実を集める。こうした季節の仕事が、当事者にとって特別な意味を持っていることは、映像で語られた収穫へのこだわりから伝わってきます。ただし、マンスールさんの家族構成、畑の所有年数、収入や被害額について、今回確認した資料は詳しく伝えていません。本人の語っていない事情を想像で補うことは避けます。
収穫を手伝う人たちも現場にいた
同じロイター映像には、パレスチナ人のモハメド・ハティーブ(Mohammed Khatib)さんが活動家とともに畑を歩く場面もあります。ハティーブさんは、農家の人々がオリーブを収穫できるよう支援に来たと説明しました。映像にはイスラエル人の平和活動家と入植者の対立も記録されています。
収穫の現場にいた人々は、農家だけではありませんでした。手伝う人、撮影する人、警備にあたる兵士、それぞれ異なる立場の人が同じ場所に集まっていました。現場の状況は複雑で、映像の短い断片だけからすべての経緯や責任を確定することはできません。だからこそ、発言者を明記し、本人の証言と撮影映像に映った事実を分けて読む必要があります。
オリーブの収穫は短い季節の仕事
オリーブの実は一年中同じ状態で採れるわけではありません。実が育ち、収穫の時期を迎えると、農家はその年の天候や実の成熟に合わせて作業を進めます。採った実は食用に加工されたり、搾油所へ運ばれてオリーブオイルになったりします。
収穫を予定どおり行えないことは、実を摘む時間が失われるというだけではありません。収穫物を運ぶ手配や、その後の加工の予定にも影響し得ます。ただし、今回の取材だけではマンスールさんの畑で実際にどれほどの収量が失われたかは分かりません。確認できるのは、本人が収穫しようとしていたこと、そしてその作業が妨げられたと証言したことです。
別の農家も語る2026年の収穫期
2026年10月22日のロイター報道では、ヨルダン川西岸地区でオリーブの収穫をめぐる暴力や作物の持ち去りが問題になっていることが伝えられました。農家のアフメド・サレム(Ahmed Salem)さんは、入植者が木をたたいて実を落とし、収穫物を持ち去ったと証言しています。報道ではパレスチナ人農家や人権団体、国連の記録にも触れています。
この報道で取り上げられた出来事は、10月9日のデイル・イブジでの出来事と同一ではありません。別の農家の証言を一つの事件として混ぜず、異なる取材から見える収穫期の課題として紹介します。イスラエル側は暴力に対処していると説明し、収穫物の扱いをめぐる主張にも異論を示しています。現場の証言と各当事者の説明を区別することが欠かせません。
木のそばへ戻ることが意味するもの
オリーブの木は、パレスチナの食卓や地域の仕事に深く関わっています。オイルは料理に使われ、地域によっては石鹸づくりにも結びつきます。ナーブルスで受け継がれるオリーブ石鹸の文化を知るとき、原料となる植物の背後には畑で働く人々がいることにも目を向けたいものです。
ただし、今回取材されたマンスールさんのオリーブがナーブルス石鹸の原料になっていると確認できたわけではありません。ここでは農家の証言と石鹸の製造・流通を直接結びつけず、オリーブという植物が地域の暮らしを支える広がりとして捉えます。
現地の声を伝えるために
2026年10月9日の映像で印象に残るのは、畑へ戻って収穫を続けたいという、土地所有者自身の明確な意思です。その言葉を伝えるとき、知らない背景を付け足したり、架空の会話を作ったりする必要はありません。発言した人、場所、取材日、何を話したかを確かめることが、現地の暮らしを正確に知る第一歩になります。
この文章はロイターの映像説明と報道記事に基づいており、現地で独自取材したものではありません。記事に記した個人の経験は、取材当時の証言として紹介しています。10月25日現在の畑の状況や、当事者のその後の行動については確認できていません。
- Reuters Connect(2026年10月9日撮影), “Palestinian farmers and activists confront militant settlers during West Bank olive harvest” 取材映像・証言の原文
- Reuters(2026年10月22日), “Israeli settlers steal Palestinians’ olives as attacks on harvest grow more violent” 報道原文
「パレスチナ最後の石鹸工場を未来へつなぐ」
10世紀から続く伝統製法で作られたオリーブ石鹸。パレスチナの伝統産業として、今も大切に受け継がれています。











