入植者暴力で異例の起訴―ヨルダン川西岸で続くパレスチナ人への暴力
ヨルダン川西岸でパレスチナ人活動家が死亡した事件をめぐり、イスラエル人入植者が起訴されました。
Reutersが2026年8月6日に報じたもので、入植者によるパレスチナ人への暴力事件で、このような起訴が行われるのは7年以上ぶりとされています。
ヨルダン川西岸では、入植者による暴力や農地への侵入、財産への被害が繰り返し報告されています。今回の起訴は、こうした事件の責任が十分に問われてこなかったとする長年の問題を、あらためて浮き彫りにしました。
パレスチナ人活動家が死亡した事件
事件が起きたのは2025年7月28日です。
場所は、ヨルダン川西岸南部のウンム・アル=ハイル(Umm al-Khair)。ヘブロン近郊にあるパレスチナ人の村です。
イスラエル検察の起訴内容によると、当時、現場では入植者側が大型の重機を使って作業をしていました。これに対して、パレスチナ人住民らが抗議しました。
その際、イスラエル人入植者イノン・レヴィ(Yinon Levi)被告が銃を発砲。パレスチナ人活動家アウダ・ハサリーン(Awdah / Owdeh Hathaleen)さんが撃たれ、その後死亡しました。
レヴィ被告を過失致死などの罪で起訴
イスラエル検察はレヴィ被告を、過失致死に相当する罪などで起訴しました。このほか、武装した状態での不法侵入や器物損壊などの罪にも問われています。
一方、レヴィ被告は自身の責任を否定しています。現在は起訴された段階であり、有罪が確定したわけではありません。
Reutersによると、事件当時に撮影された映像には、レヴィ被告が銃を構え、ハサリーンさんの方向へ発砲する様子が映っています。
映像はイスラエルの人権団体B’Tselemによって公開されました。
亡くなったハサリーンさんとは
ハサリーンさんはウンム・アル=ハイルの住民で、地域の状況を国外へ伝える活動を行っていました。
アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した「No Other Land」にも関わった人物として知られています。
同作品は、ヨルダン川西岸のマサーフェル・ヤッタ地域で進む家屋の破壊や住民の立ち退きなどを記録したドキュメンタリーです。
入植者暴力での起訴は7年以上ぶり
今回のニュースが大きく報じられた理由の一つが、入植者による暴力事件で刑事責任が問われることの珍しさです。
Reutersによると、入植者によるパレスチナ人への暴力事件で、この種の起訴が行われるのは7年以上ぶりです。
ヨルダン川西岸では以前から、パレスチナ人への暴行や住宅・車両への放火、農地への侵入などが問題になってきました。
農業への被害も深刻です。オリーブやイチジクなどの木が切り倒される事件も報告されています。
一方、人権団体からは、こうした事件の多くが十分な捜査や起訴につながっていないとの批判が続いています。
レヴィ被告は英国とEUの制裁対象
レヴィ被告は、今回の事件以前から国際的な制裁の対象となっていました。
英国とEUは、パレスチナ人に対する暴力などを理由にレヴィ被告を制裁対象としています。
米国もバイデン政権下の2024年に制裁を科しましたが、その後、トランプ政権によって解除されました。
今回初めて問題視された人物ではなく、以前からパレスチナ人に対する暴力との関係が国際的に指摘されていたことになります。
ヨルダン川西岸で悪化する入植者暴力
今回の事件の背景には、ヨルダン川西岸で続く入植者暴力の問題があります。
特に2023年10月以降、入植者による攻撃や財産への被害が増加しています。国連も、入植者による暴力の悪化について繰り返し警告しています。
被害は人への暴力だけではありません。住宅や車両への放火、農地への侵入、家畜への被害なども報告されています。
農村部では、パレスチナ人が自分の農地に入れなくなるケースもあります。また、収穫期にオリーブ畑への立ち入りを妨げられる事例も起きています。
オリーブの木の伐採も相次ぐ
ヨルダン川西岸では、オリーブの木が切り倒される被害も続いています。
Reutersは2026年7月27日、ヨルダン川西岸のTal村で、住民が入植者によってオリーブやイチジクの木を切り倒されたことを報じました。
現地を取材したReuters記者も、切断された木の幹を確認しています。
オリーブ栽培は、ヨルダン川西岸の多くの農村にとって重要な産業です。オリーブオイルの生産は収入源であるだけでなく、何世代にもわたり受け継がれてきた農業でもあります。
木が失われれば、その年の収穫だけでなく、その後の農家の収入にも長期的な影響が及びます。
今回の起訴だけでは解決しない問題
今回の起訴は、入植者によるパレスチナ人への暴力事件としては異例のものです。
しかし、ヨルダン川西岸ではほかにも多くの暴力事件が報告されています。今回の一件だけで、入植者暴力をめぐる問題が解決するわけではありません。
今後注目されるのは、レヴィ被告に対する裁判の行方だけではありません。
ほかの暴力事件についても適切な捜査が行われ、必要な場合には刑事責任が問われるのか。そして、パレスチナ人住民や農家の安全がどのように確保されるのかが問われています。
ヨルダン川西岸では、入植地の拡大とともに住民を取り巻く状況も変化しています。
今回の異例の起訴が、入植者暴力への対応にどのような影響を与えるのか。今後の裁判と現地の状況を引き続き注視する必要があります。
今後の裁判と、ヨルダン川西岸の状況を引き続き見ていく必要があります。
中心となるのは、2026年8月6日付のReutersです。起訴内容、7年以上ぶりの異例の起訴であること、映像、レヴィ被告への英国・EUの制裁などを報じています。
Reuters|Israel charges settler in Palestinian activist’s killing, in rare indictment
イスラエル側の報道として、The Times of Israelも8月6日に起訴を報道しています。同紙によると、起訴された罪は reckless homicide(無謀な行為による死亡)で、有罪の場合は最高12年の禁錮刑となる可能性があります。
The Times of Israel|Extremist settler charged with reckless homicide over death of Palestinian activist
「パレスチナ最後の石鹸工場を未来へつなぐ」
10世紀から続く伝統製法で作られたオリーブ石鹸。パレスチナの伝統産業として、今も大切に受け継がれています。










